↑ただ平凡な景色が続く福井県が幸福度ランキングで1位を獲得
そんな目立たない福井県が幸福度ランキングで1位に輝いた理由には、サザエさん一家のようにおじいちゃん、おばあちゃん、その子供、そして孫が同じ家で暮らす「三世代同居率」の高さにあります。
現代では親と子供だけで暮らす核家族が増えているために三世代で一緒に暮らす家族はどんどん減少していますが、福井県は他県と比べると三世代同居率が圧倒的に高く、東京と比較しても約8倍も高い割合になっていて、三世代同居率の高さは福井県の特徴であり、幸せの要因にもなっているようです。
1948年、戦後復興間もなくして起きた福井地震以降、豪雨や豪雪などの自然災害に立て続けに見舞われた過去が家族や地域の人々とのきずなを強くさせ、このつながりの強さが三世代同居という形に表れているのかもしれません。
↑福井県では“サザエさん一家”のような三世代同居が当たり前
まず、核家族よりも三世代同居の方が親世代から子育ての支援を受けることができるため、より子育てがしやすいのは明らかでしょう。2016年には政府も少子化対策と子育て支援を目的として三世代同居を推進する施策を発表しており、実際、同居している夫婦の方が出生率が高くなっています。
三世代同居であれば女性は出産後も子供を両親に預けて外へ働きに出られるため、福井県では子供の育児を理由に働きたくても働けない人はほとんどいませんし、安心して仕事を続けられる環境が整っているからこそ福井県の共働き率が全国1位になっていることも納得できるはずです。(1)
↑学童保育などに子供を預けるより、親に預ける方が安心できる
仕事と育児を両立させるために都会から福井へ戻ってくる夫婦もおり、Uターンで東京から福井へ夫と共に戻ってきた女性は、東京では子供を保育所に預けて仕事を続けようと計画するも保育所が見つからず、仕事と育児を両立させるという望みを叶えることができずにいました。
結局会社を辞めることになったちょうどその頃、福井で暮らす同級生から仕事と育児を両立させている話を聞き、うらやましくなった彼女は夫に相談して福井へUターンすることを決意したのです。
↑東京で子供を持つ多くの女性が「働きたいのに働けない」悩みを抱えている
それから物事はスムースに進み、子供を親に預けるなど両親の手も借りながら地元の食品会社で正社員として働きだしたそうで、順風満帆な福井での生活を夫婦は次のように述べています。
「孫たちの面倒はわたしが見るから、早く仕事を探しなさい、と義母が言ってくれたんです。福井では女性も働きやすく夫婦共働きがあたり前なんですよね。」
「正直なところ、“幸福度日本一”といわれても、ピンとこないんですよ。ここでは、みんなあたり前の暮らしをしているだけですからね。ただ、東京での生活を思い返すと、福井に戻ったのは正解でした。だからこそ『福井は本当にいいところだ』と胸を張って言えるんです。」
↑育児中の女性でも正社員としてのびのび働ける普通の暮らしが幸せ
このように、三世代同居は働き盛りの夫婦にばかりメリットがあるように感じてしまいがちですが、実は、子供たちの成長にも大きく影響しています。
アタッチメント(愛着)とは、心理学用語で人と人との親密さを表現する行動のことで、これが不足してしまうと子供は心に問題を抱えるようになると言われていて、子供は社会的・精神的発達のためには父親や母親などのある特定の人と親密な関係を維持しなければなりません。
産まれたばかりの赤ちゃんは、特に産みの母親とのアタッチメントを強く求めるのですが、その後はどんどん絆を結ぶ相手を広げていくようになり、おじいちゃん、おばあちゃんや、近所の人たちなどアタッチメントできる人数が多い子供はより愛情豊かに育つことができるのです。
サウスアラバマ大学教授のローマ・ハンクス氏も子供は祖父母と触れ合うことで安心感を得ることができるため、特に、祖父母との関わり合いが重要であると指摘していて、三世代同居は子供たちに精神的な安定をも、もたらしていることがうかがえます。